銀行カードローンはおいしい商売?融資残高公開の背景にあるのは

10/19日、利幅の大きいカードローンの過剰融資が横行しているとの批判を受けて、全国銀行協会(全銀協)が加盟116行のカードローンの融資残高を初めて公開しました。
これによると、「カードローンの融資残高は8月末で前月比0.5%増の4兆3715億円になった」とのこと。
しかし、公表された内容は前月比との比較のみとなっており、これでは我々一般人からすれば多いのか少ないのか全く判断のつかないデータと言わざるを得ません。
もちろん今回公表されたことで、今後さらに融資残高が定期的に公表されれば過去との比較はできるでしょう。
ただやはり、現時点で一部指摘されている過剰融資の問題と紐づけて分析するのであれば、これだけのデータではさすがに不十分です。
そもそも銀行カードローンは何故ここまで指摘を受け、締め付けが厳しい流れが強まっているのでしょうか。
カードローン全体が指摘を受けている訳ではない

日々の報道を見ていても分かる通り、過剰融資についてカードローン業界全体が等しく指摘を受けている訳ではありません。
指摘のまとなっているのは銀行が提供するカードローン。
ではなぜ古くからカードローンを提供し続けてきた消費者金融は指摘を受けていないのでしょうか?
実は消費者金融はすでに「是正」されてきた過去があるのです。
数年前にはやはり今回と同じように、カードローンの過剰融資が一因とされる多重債務者増加の問題が取りざたされていました。
そこで貸金業法なるものが改正され、「総量規制」という取り決めが制定されたのです。
総量規制とは、年収の1/3を超える融資を制限する取り決めであり、これにより過剰融資に歯止めをかける狙いがありました。
しかし、総量規制は消費者金融に課された貸金業法内の取り決めであったため、出資法に基づいてカードローンを提供している銀行には適用されません。
その為、銀行は「総量規制の対象外」となり、年収の額に関係なく融資が可能な状態が続けいてきたのです。
そしてついに、この度銀行カードローンにも過剰融資の問題が指摘されるに至りました。
過去の流れを把握しているものからすれば、ある意味自然な流れで現在にまで至ったと考えることが出来るでしょう。
銀行カードローンが「おいしい商売」と言われる理由

今ではメガバンクだけでなく、中小の銀行も数多くカードローンを提供するようになってきました。
個人向けであり、なおかつ融資額も決して多いとは言えないカードローンにこれだけ銀行が力を入れる理由とは何でしょうか?
実はここでも消費者金融との違いが大きく関係しています。
消費者金融の場合、利用者が申し込みを行うと、各金融業者が審査を行いそのまま申し込み者との契約、融資など、その後も直接的にやり取りを行うことになります。
いっぽう銀行カードローンの場合は若干異なります。
申し込み者が銀行に申し込み、契約も銀行と申込者の間で行われるところなどは同じ。
しかし、万が一利用者が借入金を滞納したり、未払い状態が続いたり、時に自己破産するようなケースが発生した場合、銀行がその損失を負うのではなく、保証業務を請け負っている保証会社が未払い分の借入金を利用者の代わりに銀行へと補てんします。
つまり極端な話、仮に借金を踏み倒されたとしても、銀行は貸したお金に対する損失を被らない仕組みとなっているのです。
消費者金融ではこのようなシステムは取っておらず、貸し付けから回収までをすべて自社で行わなければなりません。
リスク面を考慮すれば、銀行カードローンは極端に「ローリスク」であることが分かるでしょうか?
焦げ付きも気にかけずに過剰融資気味となっていたのには、このような銀行カードローン独自のシステムが背景に存在しているのか。
少なくとも、外野から見れば確かに「おいしい商売」とも取れる銀行カードローンだけに、因果関係は気になるところです。
今後過剰融資の問題がどのような変化を招いていくのかは不透明ですが、過去に行われた消費者金融への規制と同類の対策が講じられることになるのか。はたまた銀行側が自ら自重するのか。
まだまだ、今後二転三転と動いていきそうな予感を感じてなりません。
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